横浜地方裁判所 昭和41年(ワ)1077号 判決
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〔判決理由〕(2) 被告田辺の責任原因
被告田辺は、「被告車は、本件事故前である昭和三九年一月一日に被告門倉に譲渡しており、被告車の所有者は被告門倉であつて、被告田辺ではない。従つて、被告田辺は、本件事故につき自賠法第三条にいう運行供用者たりえず、よつて賠償責任はない」と、主張するので、この点について判断する。
(イ) 被告車の当時の車輛登録名義人および自賠法による責任保険の加入者名義人は被告田辺であることは被告田辺の認めるところである。
(ロ) <証拠>を総合すれば、次の事実が認められる。
a、被告車は、昭和三九年一月一日被告門倉に対し譲渡され、その後も被告門倉は、被告田辺の車輛登録名義を使用し被告田辺は、右名義使用を諒承していたこと。
b、被告田辺は、昭和三九年七月右車の車検をうけたが、その際も右各名義を被告門倉に変更しなかつたこと。
c、被告門倉は、被告車の譲渡をうけた昭和三九年一月被告田辺のもとを退職したが、その後も被告田辺のもとに出入りし、一緒に砂利運搬の仕事に従事しており、本件自動車事故もその途上に起きたこと。
d、被告門倉は、譲渡された被告車を使用し、自己のなす砂利運送から上る収益は同人においてすべてをえていたこと。
e、被告門倉は被告田辺と同じ取引先に出入りしていたこと。
f、被告田辺は、田辺商店の名称で取引に従事しており、被告門倉も取引に当つては「田辺商店」の名で行つていたこと。
g、被告車の車体には「田辺商店」の名称が書かれていること。
以上の如き事実が認められ、他に前記認定をくつがえすに足りる証拠もない。
右認定の事実関係によれば、被告田辺と被告門倉との関係はいわゆる名義貸しの関係にあり、被告車の所有者は、被告門倉であるといわざるをえないけれども、被告田辺は、前示認定のように、被告車の使用名義その他の関係をとおして被告門倉の運送従業に対し積極的な協力を与えており、又、被告門倉も、被告田辺に対しこれらの関係を通して依存していたといえる。又、被告田辺は、被告車の所有者名義及び自賠法による強制保険加入者名義を積極的に変更する意思は認められず、被告田辺において右各名義を温存していたものと認められる。してみると、被告門倉は、法律的には被告田辺とは別個の独立した存在ではあるが、経済的ないし実質的には、被告田辺の翼下にあるものというべきであつて、被告門倉に被告車を譲渡したことにより被告田辺が直ちにその運行についての一般的な支配権および運行利益の帰属を失つたものとみることはできない。
よつて、被告田辺は被告車の運行によつて惹起された本件事故による損害について自賠法第三条にいう運行供用者としての損害賠償をする責任があるというところ、被告田辺は、同法第三条但書にいう免責事由をなんら主張・立証していないから右自動車事故から生じた人的損害賠償義務を免れることはできない。(田口邦雄)